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090921 +8


花咲家はスキンシップが大好きです。

「あ、芳野お帰りー」
「はー疲れたわー」
「んあ。珍しいなー帰ってきて早々もたれかかってくるなんてさ。ダウンしてら」
「はー。外面がいいのも考えものだわ…先生から頼まれてばっかり。もういっそのことくたばればいいのに」
「よしよし。毒舌が出るうちはまだ大丈夫」
「んー。柑二ってほんと癒されるわあー」
「あれ?…芳野さあ胸でかくなった?」
「あら判る?背中でわかるってすごいわね、あんた。CからDになったわよ」
「おーおめでとう。そしてますます男は芳野の手玉になるわけねえ」
「失礼ね。Mな男が多いだけよ」
「いやそれもどうよ?」


「…なあ、なんで姉弟でそんな会話できるん…?(俺が美夜に言った日にゃ二度と口利いてもらえへんわ)」

(ナチュラルにベタベタする姉弟と遊びにきていたナラさん)



(キューとイバ)

「え?銀河町の最強夫婦?…そらハル兄と飛鳥さんだろ」
「クロんとこも相当なんだけどね…ハル兄たちはその上を行ってるんだよね」
「武道の腕はハンパないし、歩く法律みたいな。自分がルール、みたいな。恐ろしいことにそれが普通で通る」
「未だに思うけど、あの周りに有無を言わせないところが凄いよね」
「あそこまで堂々といけないな普通は。なんつーか色んな意味でビッグ」
「うん、下の方もビッグだぜ?」
「ハル兄…っ!?てかなにさらっと下ネタ言ってんの!?やめてここ全年齢対象だから!!」
「イバちゃん恥ずかしがんなって。あ、今夜試してみる?」
「な…っ、」
「ダメだっつーのイバちゃんは俺の嫁!」
「ちょっと遥、からかうのも程々にしなさいよ」
「イバちゃんの反応…こりゃ最近夜はご無沙汰な感じ?キュー何してんの」
「余計なこと言わんでいいわ!つーか夜の可愛いイバちゃんなんてぜってえ見せねーかんな!」
「……」
「あらら」
「あんた…本当に変わったわね…」
「え?なに?なんで…ぐふぇっ、ぐっ首、があああ」

「あははー冗談だったんだけどなー。まさかキューがあそこまで本気にするとは思わなかったわ」
「イバちゃんも腕上げたねえ。キュー、屍状態じゃない」
「まあ、…あーいうのはしょっちゅうだし」
「わお」
「愛されてるじゃない」
「たまに心臓持たなくて困ってるけど」
「「(最強夫婦はこの二人じゃないかなあ…何気にラブラブ)」」

(ハルアス26歳、キューイバ24歳の頃)



(黒須遥さんちの事情)

「沙羅ー。お兄ちゃんとちょいと遊びに行かない?」
「沙羅、ちょっとモデルになってくれねえ?女友達じゃ使えねえやつばっかなんだよ」
「え…」
「ちょっとー沙羅は私とショッピングに行くのよ」
「そんで俺は荷物持ちね」
「ええ…!」
「えー俺たまには沙羅と二人で遊びたい」
「俺だって集中して撮りたい。沙羅が一番綺麗に撮れるしさ」
「梓ーおまえなんでもかんでも被写体で考えるなよ」
「む。ナギこそ沙羅をどこに連れてくつもりだよ」
「私だって沙羅と二人で女の子のデートしたいんだから」
「あれ、俺いらない宣言?」
「(家族にモテても…嬉しくない…)」

(末っ子沙羅ちゃんの苦労)



(クロとハルアス)

「あのさあ、なんで沙羅だけ一人名前が揃ってないわけ?なんか可哀想じゃねえ?」
「やー、渚、梓ときたから次も同じように考えたんだけどね」
「見つかんなかったから(あっさり)」
「…………」
「リサとかミサとかは普通にいるから面白くないって飛鳥が言ってさ。ならせめて『さ』から始まるか、と。 俺は可愛い名前ならなんでも良かったしネー」
「面白くないってなんだそりゃ…」
「どうせなら印象的な名前の方がいいじゃない。別に一般的にある名前が悪いって言ってるわけじゃないよ?」
「まあな…よく考えりゃ男で渚と梓も珍しいよな」
「それはほれ、俺らにならってね」
「ああ…。いや別にならわんでも良くないか、そこは」
「そうかあ?まあ藍ちゃんは嫌がってたからねー」
「おい、俺は今でも嫌がってるんだが」
「昔ほどじゃないだろ。ともかく、俺と飛鳥は少々珍しい方がいいっていう観点で決めたわけよ」
「ふーん。で、沙羅にしたわけだ」
「うん。綺麗でカッコイイ女の子になってもらえる気がしていいなって」
「なるほど。それ、ちゃんと言ってあげろよ。沙羅、自分だけ仲間外れみたいだって気にしてたぞ」
「ちょっと、何でクロがそんなこと知ってるのよ?」
「なに?沙羅ってば藍ちゃんに頼るの?妬けるなあ」
「二人とも怖えぇよ目が笑ってねえー!!じゃなくって!ちげえよ、灯と陽が沙羅から聞いたんだよ!」
「あ、そうなの。それでもジェラシーよ!私ちょっと沙羅んとこ行ってくる」
「俺も行く。悩み事は話せって言ってんのになー。じゃーね、藍ちゃん」
「ミケによろしくね!」
「おう。…まったく、見かけによらず親馬鹿だよなあ、あの二人も」

(このあと猫可愛がりな両親にぎゅうぎゅうと抱きしめられる沙羅)



「沙ー羅ー!」
「わっ」

タタタ……ドカンッ

「か、柏…痛い…!!」
「沙羅ごめん、待てが効かなくて」
「いや大丈夫だけど…(弟を犬扱い!?)」


「「……」」
「血は争えないねえ…?」
「…いや、その、ね?うん…なんかごめん…」
「沙羅ちゃん可愛くて好きだけどね。…アス姉そっくりだし」
「あー複雑?痛ッッ」
「判ってるなら聞かないでよ(ドスがきいた低い声)」
「(こ、怖っ…!)」


(でも柏は別に沙羅が好きなわけじゃないっていう)



柑「父さんて母さんにベタ惚れだよなあ」
一「柑二、知ってる?父さんて、昔飛鳥さんに猛アタックしてたんだってさ」
柑「うそ!?え、兄ちゃんほんとに?いつ!?」
一「ほんとほんと。確か父さんが中一ぐらいから高二までかな。ナギんとこ行った時、遥さんがこっそり教えてくれた」
柑「…普通そーいうの教える?」
一「遥さん何でも面白がるから。それはもう嬉しそうな顔だった」
柑「想像できる…」
芳「そこからどうやってお母さんになったのよ?」
一「さあ…じわじわ、じゃない?」
キ「恋する瞬間なんていつ来るか判んないもんだぜー?」
柑「親父、いつから聞いて」
芳「そしてニヤニヤしてんのが気持ち悪いわ」
キ「最初から」
柑「言えや」
芳「お母さんはいつからお父さんが好きになったのかしら」
イ「きっかけなんてないよ」
柑「おわっ!?」
一「今度は母さんか。…ないの?恋に落ちた瞬間とか」
イ「まさか。気持ちに気づいた瞬間はあるけどね」
柑「ええ?どゆこと?」
イ「うーん。私にもよく判んないけどね。 父さんがアス姉にアタックし始めた頃かな、父さんの真剣な顔を見ちゃってね。 妙にショックを受けて、それで気づいたんだよね」
芳「いつのまにかってこと?」
イ「たぶん」
柑「そんなもんなの?」
キ「そんなもんだろ、大概。ミケクロなんて境界線が見事になかったぜ。ミケは周りに言われてやっと意識したぐらいだし」
イ「ああ、ねえ。あの二人は『絶対』の領域だったもん」
「?」
イ「つまりね、好きとかどうか以前の問題。生まれた頃から一緒で、一番気が合っていてね。 お互い居なきゃ呼吸が出来ないような存在だったんだろうね。 だから気づかないっていうか、そんなこと思ってもみなかったっていうか」
三人「へえー…」
一「まあ、父さんたちもそうなんじゃないの」
キ・イ「「へ?」」
一「いるのも大切なのも当たり前だったから、恋と愛の境目がなかったんじゃない?」
「「………」」


(そう、かもね)



「す、すみません…っ」
「いえ、大丈夫ですか?」
「はい、………(じー)」
「?なにか…?」
「いえ、あの、なんか…」
「??」
「ふふっ。アフロ、可愛いですね」
「…!(笑顔可愛い…!)」


クロ「なれそめがアフロかあ…」
イバ「微妙」


(マスターと奥さんのなれそめ)


▼作者によるインタビュー

『あだ名は?』
一「俺?俺はイチだよ。たまにベリーとか言われるけどね」
『…それは苺、から』
一「と、ベリーショートから」
『…それは誰が言ってるので?』
一「ナギだよ」
『(ナギ…!)あーでは。弟さんたちはどうですか』
芳「柑二はそのままかしら。たまにカンちゃんとか呼ばれてるわね」
柑「芳野は芳野だよな」
柏「よし姉ちゃん!」
柑「それはおまえだけ」
『ナラは柑二だけ京哉って呼ぶよね?』
柑「なんか京哉って呼ぶ方がなじむんだよ」
『で、椿は…』
柑「そりゃもちろん椿ひm」
椿「死にたいか」
『(し…瞬殺ー!)かかかか柏は?』
「「「カッシー」」」
『……(いや…カッシーはどうだろう…)』


一梧→お兄ちゃん(芳)、兄ちゃん(柑)、一兄(椿)、一兄ちゃん(柏)
芳野→芳野(一、柑)、姉さん(椿)、よし姉ちゃん(柏)
柑二→柑二、カン、柑兄(椿)、柑兄ちゃん(柏)、たまにカンちゃん
椿→椿、椿ちゃん(柑)
柏→柏、カッシー、たまにカシイ


▼双子妊娠発覚時

運命とは不思議なものではあるけれど、まさかこんなことになるとは思わなかった。
早くに逝った妻は、双子を出産したあと病に倒れた。そして、時を経て、娘も。双子を妊娠した、なんて。
喜びと恐ろしさと不安に身体は震えて止まらない。

「一休くんは」
「止めようとは思わないのかい」

ポツリと呟いた問いかけに、彼は笑った。なんでもないことのように、当たり前みたいに。

「俺は信じます、イバちゃんの"大丈夫"の言葉」
「イバちゃんが嘘ついたことはないですから」
「絶対大丈夫って信じてます」


――それに、きっとおばさんが守ってくれているような気がするから。



私は、そのゆるぎない答えに瞳を熱くして…泣いた。
泣かないで、おとうさん。
その優しい声に、ただただ涙が溢れて止まらない。
願わくは、どうかこのやさしい息子が喜びの涙を流せるように、娘に死が訪れることのないように。
あんな思いは、二度とごめんだ。



(かつて妻を失った男と、同じ運命を辿る妻を信じる男)





「なんでなんだろ…」
「なに?どしたのイバちゃん」
「………」
「…杏子?」
「………いや、前々から疑問だったんだけどね…」
「(イバちゃんて可愛いよなあ) うん、」
「柏と柑二はまあ私寄りではあるけど、それにしたってなんでこんな美形揃いの兄弟に育ったのかね、と」
「そりゃーもちろんこのキュー様の遺伝だろ!」
「…………」
「なに?」
「………あんた今日晩ごはん抜きね」
「えっなんで!?ほんとのこと言っただけ…」
「うん判った今決定したよあんたもう金輪際、花咲家の敷居跨がないで」
「俺ここの長男なのに!?」


(あれ?お父さんなんでそんな隅に正座して)
(気にすることはないよ。いい?これから父さんは空気だからね)
(判ったわ)
(おいちょっとなんで瞬時に受け入れるんだよ!?なんだよその適応力!)
(良かったわね柏、今日から父さんの分もたくさん食べられるわよ)
(えっ、ほんと!?やったー!)
(柏ー!?おまえはそんなこと言わないって信じてたのに!)
(自業自得だろ)
(あれ、椿ちゃん?なんか今さらっと父を非難したよな!?)
(えーでもさ、親父いなかったらこの店回んないぜ?客の大半は親父のファンだもん)
(((いやそんなにはいないでしょ)))
(お父さん、もういい年よ?)
(いやだってうちのクラスのほとんどの女子が親父見たさに行ってんだぜ?)
(か、柑二ー…!おまえ来月からお小遣いアップ!父さんは今猛烈に嬉しい!!)
(はあ…しょうがないなあ。癪だけど許すか。癪だけど)
(二回も言わなくていいから…)
(つまらないわ、しばらく遊べると思ったのに)
(おまえは父をなんだと思ってんの!?)



(女として悔しかったイバちゃん)





生まれた時から、柏が羨ましかった。なぜそんなに素直に感情を表せるのだろう。 どう考えても、彼のそのバカ正直さをカバーするために、 自分はいかなる時も冷静沈着であるように生まれた気がしてならなかった。

よし姉ちゃんー!と十四にもなって柏は嬉しそうに駆けていく。 振り返った芳野も同じように笑って、なあに?と答えた。 小さな時から自分にくっついて離れなかった弟だ、どうしようもなく可愛いだろう。 椿だって、まっすぐに慕ってくる弟に顔をほころばせることは多い。 同い年とはいえ、やはり自分は兄なのだ。
でも、自分は絶対にあんなことできないと椿は思う。どうして。どうして、あんな風にできるんだろう。

「椿」

その時、ひょこっと顔を覗いてきたのは、兄の柑二。柑二の、少し長めの黒髪がさらりと揺れた。
しばしじっと見つめてきた兄は、ふいに笑った。

「つーばき」
「え?」

思わず目をぱちくりとさせた。急に風を感じたかと思えば。

「なにして…!」
「はいはい暴れないのー。素直に甘えとけって」

ね、と楽しそうに笑ってポンポンと背中を優しく叩きながら、彼は実にいとおしそうに椿を抱き締めた。
兄がニコニコと笑っている様があっさり想像できて、椿はなんだか恥ずかしかった。 子ども扱いされている。
三つしか違わないはずの兄は自分よりもずっと背が高く、少し広い肩をしている。 直にそのことを感じるのは柄じゃない、ただ黙ってなされるがままでいることさえ。
椿は顔に熱がじわじわと集中してきているのを感じていた。けれど。突き放そうとしてやめた。 そっと両手を伸ばして、兄の服の裾を小さく握りしめる。
ああ、どうしてうちの兄弟はこんなにもまっすぐなのかなあ…
自分にはそれがないといつまで憧憬の眼差しで見つめればいいのだろう。 そうしたってなんの意味もないのに。
涙が落ちそうなほどに熱くなった瞳を隠すように、兄の胸に顔を押しつけた。

それでいいんだよ、と柑二が小さく優しく笑った気がした。


(椿いいなー!俺も!)
(おー、柏も来い!)
(ずるいわ、私も)
(え、芳野も?いいけど)
(私だって甘えたいのよ)
(いや俺なんも言ってないよ!)


(何してんだろーな、あいつらは)
(何だろうねえ。でも微笑ましいね)
(だな。とりあえずカメラカメラ)
(…あんたも立派な親馬鹿だよねえ…)




「なあ、ここ十畳はあるよな?」
「うんあるけど。どうしたのキュー」
「なんであいつらあんなに一つに固まってんだ?」
「え?ああ…。言っとくけど、過剰なスキンシップはあんたの遺伝だよ」
「はあ!?うそだろ、杏子じゃねえ?」
「なんで私なのよ、そんなことしてないじゃない。100%キューでしょうよ。それしか考えられないよ」
「んなことないって、俺じゃなくない?」
「ぜっっったい、キュー」
「えええマジかよ、俺あんなベッタリしてるかあ!?」
「してるね。隙あらば肩に腕を回して来るのは誰?」
「…………俺」


(見事なイバちゃんの勝利)




イ「え?ミス七星?に選ばれたの?」
柏「よし姉ちゃんが圧倒的に一位だったんだってー!すごいよね!これで三年連続だよ」
柑「芳野って確か中学でもミスに選ばれてたよなーここでも三年連続。あ、そういや椿おまえ今回女装して出ないかって言われてるんだって?」
椿「刺すよ」
柑「ごめんて、シャーペン刺しはきつい」
イ「…………」
芳「お母さんどうしたの?」
イ「………芳野」
芳「なあに?」
イ「どうして私の腹からあんたが出たのか心底不思議だよ…」
芳「まあ、生命の神秘ね」

それは違うと思う、と弟たちは心の中で突っ込んだが、何も言わなかった。



(とりあえず学校一の美女に決定おめでとうパーティーを開こうとあとから聞いたキューが提案)
(もちろんアホかとイバちゃんと芳野に却下される)