「あ、あっ、ふあんっ、ま、まって深行くん、あ、は、激し…っ」
「…っ、悪い…我慢できない」
「そんな、ああっ、や、あ、ひあっ、は、あっ」

ぐちゅ、ずぷっ、と聞くに耐えない淫靡な音と喘ぎ声がこの部屋を支配していた。 鉄のように熱くて硬いそれは容赦なく泉水子を貫く。
前戯でさんざん苛められて鳴き疲れたはずの声からはまだ甘ったるい響きがなくならず、むしろ増していた。 その喘ぎ声に深行の雄がどうしようもなく刺激されるなど、泉水子は思ってもない。
今まで深行の上にいた泉水子を押し倒し、脚をつかんで激しく責め立てる。 枯渇することのない深行の欲望は、すでに二度目の絶頂に向けて鋭利に尖って泉水子の身体を奥まで貫くばかりだった。 その愛に溺れる泉水子の中は、深行のキスにさえも、きゅううと雄を力強く引き込む。

「く…っ…鈴原…、締めすぎ…っ」
「だって…っ、あ、やあっ…ひゃあんっ、」
「だって…なに?」
「んっ、はあっ、」
「聞かせろよ」

耳元で囁くから彼はずるい、とばかりに泉水子は深行を恨めしげに見た。こんな時だけ、優しい声を出す。
また素直に反応した泉水子に、深行は苦しそうに眉をひそめて低く唸った。

「…キツ……」

絡みつくそこは泉水子の性格とは正反対に限りなく妖艶で卑猥だった。 本人は恥ずかしさと快感の狭間で抗うように声を上げて涙を流すばかりなのに、 蕩けきった蜜壺は男を誘惑して奥へ奥へと引きずり込む魔性の女そのものだった。
そのギャップがまた深行の劣情を刺激して腰は止まることを知らない。

「……で?」

促してもなかなか答えない泉水子に焦れたのか、腰を使って捩じ込むように泉水子のイイ所にグッと自身を押しつける。 とたんに泉水子は電流が走ったような感覚に細い悲鳴を上げるから、わざとそこを激しく責め立てた。
自分でも意地が悪いとはわかっていた。それでも聞きたかった。泉水子の口から、感じてくれる理由が。

「やああっ…あ、っん、…あっ」
「なあ…なんで」
「あっ、ぁあっ、ん、だって、あ、き、キモチ、…イイから…っ!?やあ、おっきい…っ」
「っ馬鹿…んなこと言うなよ…!」
「や、ああっ、ふあ、あ、ふうん、んっ、も、ダメ、ダメ…ッ、」

――可愛すぎた。思わず深行の怒張は、どくん、とさらに膨れ上がって、それはイイ所を刺激してやまないらしく、 泉水子の快感にむせび泣く声は止まらない。
その声は一生頭にこびりついて離れないんじゃないかと深行は少しだけぞっとする。 もしそうなれば四六時中泉水子を抱きたくて抱きたくてたまらなくなるに違いない。

(…っ好きな女を抱くなんて…最高の麻薬みたいだ…)

涙とお互いの性液でシーツはぐちゃぐちゃに濡れている。けれど気にやむことなく、むしろ愛しくさえあった。 ふたりが激しく求めあって繋がった、何よりの証拠だから。
そんなことを考えている間にも、泉水子は絶頂へと向かう。

「んっ、あっ、やあ、こわい…なんかくる…っ」
「く…っ」
「、は、やぁッそこダメ、そんな擦らないでえ…っ」

そこからはもう形振り構わず強く激しく腰を打ち付けるだけ。 細い脚を掴んで肩にかければ、ぐっと挿入は深くなり泉水子の喘ぎも高くなる。 頭がだんだん真っ白になっていく。もう何も考えられずひたすらに彼女を愛する。 繋がれた手からは痛いほど感じてくれているのがわかって、ますます抑えられない。
狂おしいほどにいとおしかった。だから閉じ込めて永遠に誰にも見られないようにしてしまいたくなる。

「…みゆき、くん、っあ、…す、き、っ」
「……っ、…すず、はら…っ」

そんな舌足らずな口調で、涙でぐしゃぐしゃな顔で、名前を呼ばれたら。すきだと言われたら―― こんなんじゃ足りない、もっともっと繋がりたい、もっともっと苛めたい――果てない欲望が膨れ上がる。
どうしたら満足するんだろう。どうしてこんなにもいとおしいんだろう。
汗が額から零れ落ちた。今までにない鮮烈な快感に一瞬震えた時には、泉水子の中に精を放っていた。





お互い荒い息を吐きながら、抱きしめあった。
泉水子の匂いに誘われるように首筋に顔を埋めてすりよれば、くすぐったいのか、かすかに笑う声が聞こえた。

「なんだ?」
「ううん…深行くんってそうやって甘えること多いなあって」
「…そうか?」
「うん。私は、嬉しいけれど。なんだか…私だけが深行くんに心許されてるみたいで…だから何されても嬉しいって思うのかな」
「……へえ、じゃあこんなことも?」

泉水子の言葉に性懲りもなく加虐心が湧いた深行は、泉水子の胸の飾りを軽く弄る。
驚き声を上げて顔を真っ赤にしつつ、泉水子は上目遣いでそっと答えた。

「もう…!……もちろん…深行くんになら何されても…いい、よ?」
「――――」

深行は絶句する。だから、そんな恥じらうように言われたら!
頭をがしがしと掻きまわし、小さなため息をつく。おまえはどこまで誘惑すれば気がすむんだ、という呟き付きで。

「…わるい、もう一回」
「え!?…あっ、やあっ」
「可愛いこと言う鈴原が悪い」
「なん…んっ…」

ああ、もうすきだ。すきだすきだすきだ…彼女の身体を突いて再び蹂躙しながらも、言葉にできない想いをこめて唇で伝える。
舌を絡めあって、何度も深く繋がって。とろんとした瞳を向けた泉水子は、嬉しそうに笑っていた。 恥ずかしそうに頬を染めるその純粋さは、出会ったときからずっと変わらない。


その笑顔がたまらなく深行をどうにかさせてしまうことなど、 永遠にこのままでいたい狂おしさを生むことなど、彼女は知る由もないんだろう。







どれだけひとつになっても

伝えきれない愛なんて、

一生縁がないと思っていました




(きみに、出会うまでは)




2011.01.16.aoi(改稿0118)