思えば、こいつらとは生まれてからずっと一緒なのだ。 物心もつかないうちから十何年と共にいれば、嫌でもテレパシー能力がつくに違いない。
そしてそれは俺たちにしか効かない魔法なのだろう。
そう思う。心底、そう思う。



しけた面してんじゃないよ。
そう言うかのように、気がつけば一番星に連れ込まれ、事情を察した周りの大人たちによっていつのまにか酒が入って 明るくどんちゃん騒ぎ。
涙、でた?
そう言うかのように、気がつけば一番星ではない部屋の中――酒で酔い潰れたのだろう――彼らはぐちゃぐちゃに無茶苦茶な体勢で、俺の手を握ったり俺の膝にうつ伏せになったまま寝ている。 みんな、笑顔だった。しあわせそうだった。
なんで?俺は何も言っていない。ずっと、何があったかなんて一言も言わなかった。どうして解ったんだよ。

どうしてって、そんなの愚問でしょ。・・・幼なじみだからだよ。 幼なじみだから、ずっと一緒にいたから解るよ、キューのこと。 何も言わなくても、何も聞かなくても、解っちゃうんだよ。

・・・そんな答えが返ってくるんだろう。きっと彼らは笑ってそう言うだろう。 解る、俺だってみんなと同じだから。これは俺たちの魔法。だからこんな問いかけ、なんの意味も成さない。
だけどそうせずにはいられなかったのは、それほどに彼らの手が温もりがあたたかかったからだ。 なぜこんなにやさしいのだろうと思わずにいられなかった。
寝息しか聞こえない、しんとした部屋の中で、ぽとん、と雫が静かにこぼれ落ちた。



「・・・自暴自棄になる暇なんてねえよなあ・・・・」



いつだってしあわせな道に進ませてくれる。 この手が、温もりが、彼らが。 だって今も、その寝ていても笑っている顔が俺にそっと語りかけてくれるんだ。


こいつらのひだまりのような存在が俺の道しるべなのだと、心から気づいた夜だった。















(ね、ひとりじゃないよ)





* Neuron7

08.11.03.aoi


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失恋した日の出来事。
商店街のみんなはこんな風にさりげなく励ますと思う。
いやべつにさりげなくもないか。キューの失恋をダシに宴会といきそう(・・・)

一応10代設定ですので断わっておきます。未成年の飲酒は禁止ですよ〜。