悲鳴と笑い声が廊下にかすかに響いている。

「「・・・・・」」




杏子の部屋からなにやらすこし騒がしい音がして目が覚めた。 同様に起きてしまった桃子と覗きにきてみれば、なんのことはない、キューがいたからだった。

最初はなぜキューがいるのかと眩暈がしそうになった。夜寝る時にはいなかったはずなのに。
密会していたのだろうか?とも思ったが、天使と悪魔が会うのになんの不自由もないからそれはない。 まさか寝静まったあとにキューが忍び込んできたとか?ふたりは恋人同士で、そういうことをするほどの仲なのだろうか。

そこまでもんもんと考えていたが、ふたりの会話を聞いて納得がいく。
つまり、彼は夢の中で杏子がいなくなったのが悲しくて、いてもたってもいられなかったのだ。 だからここにいる。

そう気づいたあとは心の中は穏やかで、あたたかいものに満たされていた。
それほどに想ってくれる子がいるのだ、杏子には。 杏子も、ハリセンで容赦なくどつきつつも心なしか嬉しそうに見える。
なんだかほほえましくて、心配いらないだろう、さあ戻ろうか、ときびすを返そうとしたその時。

なんとふたり仲良くベッドの中へ入っていってしまった。

数秒固まる。ああ・・・なんてことだ。
父親としてはできればこんな光景は心臓に悪すぎて見たくない。 しかも本人たちの口から冗談でも男女の仲を表す言葉が出てくるのだからなおさらだ。

気になってずっと眺めていたが、特になにも起こらないようで、ほんのすこしほっとする。
しかし・・・・ほんとに仲睦まじい。
どこの夫婦にも必ずあるとは限らない、強くて確かな信頼で結ばれた絆がはたから見てもはっきりとわかる。
これは、これは・・・・・。


「ねえ、とうさま」
「ん?なんだいモモコ」
「わたし、ふたりはもう結婚しちゃえばいいと思う」
「・・・・・うん、そうだね・・・・・・」


やはりまだ十を少し過ぎたばかりの桃子でもそう思うらしい。
そしていつのまにか自分の口角が上がってきているのを感じていた。

「・・・さあ。もう一眠りしようか」
「うん」

笑い声がだんだん遠ざかる。
その声を聴きつつ微笑みながら、朝食の席で杏子にキューとのことをいろいろ聞いてみようと思った。








朝 日 が の ぼ る こ ろ の

し あ わ せ




(すてきな朝だね)









07.12.22.aoi
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おまけ。
早朝からふたりの仲の良さにあてられちゃう杏子パパンと桃子。

あのおだやかで優しそうなパパなら焦りつつも 「キューくんがお婿さんかぁ、それはいいなあ」とか自然に乗り気になっていそう。 と思ったのでわたしなりのパピーは桃子の意見を否定しません(笑)
いいじゃないですか、「ふたりはまだ結婚しないの?」とかさりげなくけしかける(しかもあの優しげな笑みで)とか!
んで赤くなっているふたりをにこにこと見守っていればいいと思う。(おまっ、妄想しすぎだ)
というか実はそれに似た話があるので今度アップできたらいいな。杏子パパは出てこないけど。

こういう第三者目線大好きなので、また書きたいなと思います。