離れようと思った。
これ以上そばにいたら、好きという気持ちだけじゃなく醜く歪んだ思いもぶつけてすべてが壊れそうだったから。 それは今までの私たちじゃいられなくなるのと同じだった。
もしかしたら私が想いを告げた時からもうそうなのかもしれないけれど。


忘れていいよ、と言って足早に去ろうとする。
そう、これで終わりだ。
なんて安易かな?でもこれしか思いつかないの。 これならキューを傷つけずに済むんじゃないかと思った。
足音も聞こえない。まるで時が止まったような静けさの中で、私は、行く。














「バカ、勝手に結論出すんじゃねえよ!!!」


流れた沈黙を大きく破れば、世界に音は戻ってきた。
背中を見せているイバちゃんの肩がビクッと揺れて、立ち止まった。
そういえば彼女に怒鳴るなんて初めてのことかもしれない。 いや、そんなことは今はどうだっていい、それよりも強く伝えたいことがある。
何も聞かずに俺の元からどこかへ行くなんて絶対にさせない。 そんな哀しい終わり方はごめんだ、俺たちの仲はそんなもんじゃないだろ?


あのな、俺はな――――――。











ぎこちなく振り返ったイバちゃんの頬にひとすじ、綺麗な涙が流れていた。










ふ ざ け ん な 、愛 し て る



(だから離れるな、)





* ミュシカ

08.4.7.aoi