本当に?とまだ信じられないという目で問えば、キューは呆れたような顔になった。



「イバちゃんてそんな自信なかったっけ?なんで俺の言うことが信じられないかね」
「いや、だって・・・」


しょうがないじゃない、目に見えないものをほいほい信じることができるほど私は子どもじゃないんだから。 疑り深くもなるよ。キューのことは信じられるけれど。
キューはちょっと困った顔でガシガシと頭をかいた。


「そうは言ってもな、これが本当なんだから仕方ないだろ。信じるしかねえじゃん」
「・・・・・」


黙ってキューを見ている私に、キューも目線を合わせる。 どうしたら信じてもらえるのかをじっと考えているようだ。
やがて、キューはひとつ息を吐いて、小さく口の形だけで笑った。


「やっぱりこんなこといくら考えてもわかんねえや、俺には。とりあえず俺はイバちゃんが好き。 それだけ覚えていてくれればいいよ」


え?
予想外の切り返しにぽかんと口を開けた私に、今度は声を上げて笑ったキューは手を差し出した。
それにも「?」という表情の私に、彼はなおも笑ったまま、おどけるようにこう言ってみせる。



「お嬢さん、記念におひとつお手をどーぞ?」



プッと、とうとう私も噴き出して笑ってしまった。
そうだね、そういうことだ。
愛を確かめる方法も信じられるようにする魔法も、この世には存在しない。答えなんてわかりっこないのだ。
だからこうして温もりを重ねて分け合って、そうすることで安心も未来も少しずつ感じていけばいい。 とりあえず、こうしよう。キューはそう言っているのだ。
微笑んで、手を重ねる。「ありがとう」が伝わるように、優しくそっと。
キューがにっこり笑った。照れ臭そうだけど、まぶしい笑顔だ。この笑顔がずっとそばにいてくれたらいいと思う。




いま、確かに彼の手と私の手が繋がった。
ここから、この重なったふたつの手から、これからの二人が始まるのだ。











始 め よ う か 、協 奏 曲



(素晴らしいメロディーを奏でようじゃないか!)





* ミュシカ

08.4.7.aoi