いつもこころのどこかで誰かがささやく

つかれてるんならやめれば?

だけど消えない消せないこの想いは
いつかあなたの胸にも同じ花が咲くようにと願ってしまっている
飽きもせず


どうすれば近づけると考える恋じゃなくて

近すぎるから遠く遠くたまにしか見えない星になって
初めてずっと見つめてもらえたらいい、
そう思う恋であることだけが



・・・・とてもかなしい




パァン


真正面に空高くあがった花火は、案外すぐそばにあるかのように感じた。 その迫力ある大輪の花に、綺麗ー!とはしゃぐ声が周りから続々と聞こえる。
丘の公園の小さな展望台からこんなすごいものが見られるなんて。 穴場だと驚いているのはおなじみ六人組と、それから。

わたしは声を発することなく、ただ黙って空を見上げていた。 バチバチバチ・・・とはじける音が耳の中でこだまするけれど、後ろから聞こえる声に自然と集中して息はつまる。

なんでふたりが一緒に並んでいるんだろう。 ぎゅっと手すりを強くつかんで口からなにかが出そうになるのを耐えようとする。
クロはミケと、サトはマモルと寄り添うようなかたちで一緒にいる、でも気にしない。 だけど、キュー、は、 。
聞けない。聞いてどうなるの?傷つくのがオチなんじゃない。
ハル兄も近くのイスに座ってそばにいるけれど、なんだかすごく寂しい。 夜の闇の中、まるでひとりぼっち。 暗闇に閉ざされて、誰も手を差し伸べてはくれない孤独の世界にたったひとり、放り出されたような気がした。


なあ、アスカさんはここで見ていていいの。
いいよ、別に友達と見る約束もしてないし。
いや、そういう意味じゃなくって・・・・あーその・・・。
?・・・・あ、またあがるわよ。


ヒュウゥゥゥ・・・・・・ドオン・・・。


なにも聴きたくない、聴かせないで。
花火の音がすべてをかき消してくれたらいいのに。

アス姉はキューがとなりにいることを許し始めている。 あんなに拒んでいたのに。同じ空気の中で育った、ただそれだけで。 そばにいることを許してしまえるのか。結局、そうなるなんて。
・・・ずるい。アス姉はずるいひと、だね。


つかれてるんならやめれば?

また聞こえるあのささやき声。
彼を好きでいること、やめられたらどんなに楽だろう。 好きになってから涙をいくらぬぐってもぬぐっても全然足りないんだ。 最近じゃ、かなしみの方がよりよく降り積もるようになってしまった。 そういう思いばかりしている。

ふるふると震えながら高くあがってゆく花火が闇の中、咲いてはわたしをあかるく照らす。 まぶしい。胸をはっきりと打つけれど、せつなくも感じている。どうして? 夏が終わるから?後ろに立っているふたりが気になってしょうがないから? この想いが報われない自分を哀れんでしまってるから・・・?

彼に恋したのはそんな自分になるためじゃない、そんな気持ちばかり知るためじゃない。 意地悪く歪んだどうにもならない気持ちが育っていくなら、ふたりが一緒にいるのを見るようになるのなら。


想いは消えない消せない、好きでしかたない。あなたを想うだけでしあわせ。
そのはずだった、けど。








花火は消える
一瞬にして消える
涙の雫にも映らない残らない

だけど星なら消えない
ずっと見ていてくれる
夜になるたび探してもらえる
見つめてはなにかを想ってくれるだろう
はじめてなにかに気づいてくれるだろう
そうしてわたしもしあわせだと思うでしょう


だから

いまよりずっとずっと遠くの星になりたい

あなたから離れたい

わたしは星になってあなたを見下ろして
恋火を涙で消しましょう


ヒュ・・・・・・ドオオォン・・・・・。



またひとつ夜空に花がおちて

恋心もひっそりと涙とおちた






花 火



( ば い ば い )





08.1.18.aoi
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

♪花火/aiko

静かに恋をして誰にも気づかれずに恋を終える。 そんなのもイバちゃんに合うなあ、なんて思ってこれができました。 近すぎるから離れたい、というのがテーマ。

ちなみにハル兄は実はすべて知っていてキューに「おまえ誰かを泣かせてんの知ってるか?」なんて 陰で杏ちゃんの敵を打っていたらいいと思います。オレの可愛い妹分になにしてんの、的な。
そんで何も言わずポンポンと頭なでなでして杏ちゃんをなぐさめてたらもっといい。