この河原にはたくさんの思い出があると思う。
学校からみんなで並んで帰ったこと、夕焼けの中、いつまでも走りまわって遊んでいたこと、 ・・・自分に自信がなくて離れそうになった時、叱って励ましてもらったこと。
あの時ミケは泣きながら怒って、それでもあたたかくて優しい言葉をくれた。
いつもそう、ミケは些細なことでも自分のことのように泣いたり笑ったりしてくれる。 大好きな大好きな、私の友達。 そして隣にはいつもクロちゃんがいて、それが当たり前の世界だった。 私の大好きな大好きな、ひと。
ここで励ましてくれたのも彼だった。あとで返せよと言って、くれたお守りはどんなに心強かったか計り知れない。 みんながくれたお守りも確かに力になっていたけれど、それ以上にくじけそうな私の心を支えてくれたのは、 きっぱりと強く「頑張れ」と言う彼の自信に満ち溢れた笑顔だった。 その笑みを見るだけで心は震える、ああここで負けてはいけないと思った。 どんなにつらくてつらくて涙が零れ落ちそうになっても。負ける道を選んではダメなのだと彼を見るたび思う。
彼のそのまっすぐさはいつも刃のように私を刺すけれど、うらやましかった。どうしようもなく彼は強い。 たとえ私より身長が低くても、同じくらいに軽い身体だとしてもそんなことは関係がなかった。 彼は何にも決して屈さない。強さも優しさも鋼のように折れることはない。その心が死ぬほど好きだった。



・・・好きだった。誰よりも。
苦しみも羨望も嫉妬も嘘も与えた、この想い。つらかったけれど、一度たりとも後悔したことはなかった。 好きになってよかった。 そう思えるのは、大好きなひとの笑顔が輝く、ともに笑いあう、そんな瞬間が何よりも幸せだったから。



「・・・夕陽が沈む、なあ・・・・」



草の上に寝っ転がっていた私はいつのまにかボーッとしていたらしく、ようやく気がついた。
茜色の空が向こうへとだんだん遠ざかっていく。 あともう少しすれば、ちろちろと流れる川に映る色はもう夜のように冷たくなるのだろう。


「・・・・・っ・・・」


・・・まるで、今の私みたい。
橙は燃え尽きて、また誰かを愛することを知らなかった頃の夜に戻る。哀しい藍の色。 ああでもそれは彼の色、それならきっと寂しくない。 再びの燃えるような橙を心に灯す日がくるまで、彼の色にくるまって生きていこう。 それでいいのだと納得させて私は愛するふたりの幸せを祈ろう。 ふたりがふたりでいてずっと彼らの笑顔が続くだけで、心は十分満ち足りるのだから。




それでもお願い、今だけは。





失った恋心のための涙を流させてください。














(想いが燃えた日)






* 9円ラフォーレ

08.4.7.aoi