掠めるようなそのキスに、彼女は思わず本音をさらした。




「ねえ…深行くん」
「なんだ?」
「私…欲張りなのかな。その、こうしてるだけで嬉しいのだけど」
「ああ」
「…もっと、ちゃんと、キス、して…?」


深行は固まった。
俯く泉水子は、赤らんだ頬を必死に隠そうとしている。
ついには恥ずかしくて後悔してたまらなくなったのか、深行に背中を向けてしまった。
男にとっては先程のセリフだけでも衝撃的だったのに、今度は視覚的にもグッとくるものがあった。
――細い肩。いつもはあまり見られない白いうなじに……深行の身体は自然に動いた。


「ひゃっ!?みっ、深行くん…!?」


肩を後ろから掴み、首筋に唇を這わす。ちろりと赤い舌がさっと泉水子の肌を掠めた。
初めての感覚に泉水子はか細い息を震わす。
心なしか喘いでもいるようなその掠れた声に、深行の心は余裕をなくしていく。
性急めいた動きで泉水子を正面に向かせれば、深行はごくりと喉を鳴らした。
泉水子の、潤んだ瞳、口からわずかに漏れる熱い吐息。深行を昂らせるには十分で、我ながら余裕のなさには呆れてしまう。
けれど。



「――後悔するなよ」



泣くほど可愛がってやる。
早口にそう告げると、まるで獣のように泉水子の唇に噛みついた。









Lovin'you



(どうしようもなく)











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2010.10.16.aoi